木の枝も空も、吐く息も白い冬の公園では、

にぎり合った手を宏人のダウンジャケットのポケットに入れて。

白い雪をかぶったせいで、踏み込む足音さえ静かな道の上を何も語らず歩いた。

木の根につまずいて、よろめいたあたしを右腕で支え、

「あぶねーなぁ」

と笑う宏人の笑顔とつないだ右手から伝わる体温が、冬の空気のなかでとても温かかった。



とりわけ、この公園で過ごす秋の時間は一番好きだった。

両手でぐっと抱え込んでも納まりきらない太い幹を持つイチョウの木。

その葉が鮮やかな黄色に染められ、ブルーの高い空をキャンバスにくっきりと映える光景を、

この白いベンチに座って眺めているのが好きだった。


葉の隙間から穏やかに降る木漏れ日が、あたしの肩の上で揺れ、宏人の頬を柔らかく包み込む。

そして枯れ葉と湿った土の匂いを含んだ風が、あたしたちの周りで透明なベールを作る。

その緩やかな空間で、

宏人は缶コーヒー、あたしはミルクティーを膝の上に、

他愛もないおしゃべりをしながら何時間もそこで過ごした。