――宏人は目を覚ましていた。
――先に目を覚まして、あたしを待ってくれていた。
あたしを悲しませないためにペンダントまで元通りにして。
自分の身体は二の次に。
なのに。
あたしはまた、宏人を待たせてしまった。
いつものように。
微笑みながらそこに居てくれるはずだった。
――なのに。
今度だけは、待っててくれなかった。
一人で逝ってしまった。
優しさだけを残して。
あたしは、宏人の最期も見届けられず、ただ眠っていたんだ。
宏人との最期のお別れもちゃんとできず、告別式すら参加することも叶わず。
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