プレイボール

ポツポツ、僕はシニアの監督、佐々木監督にいつの間にか全てを打ち明けていた。
今日初めて話したのに、監督は僕の話を途中で遮ることなく聞いてくれた。

妹のこと、両親のこと、目標のこと、全てだ。
悔しくて、泣きながら、でもどこか聞いてくれるのが心地よくて、そんな心境だった。

「一郎君、君の野球人生はまだ始まったばかりだ。シニアでは俺が監督をしてやる。
お前を甲子園で通用する選手にしてやるよ。だから、諦めんな」
そういって佐々木監督が僕の肩に手を置く。

なんだか久しぶりに温かい気持ちをした。
僕は被っていた野球帽を脱いで頭を下げる。
唇を噛み締めた。

「もう、メソメソするのは今日だけにしろ。明日も朝練こいよ。」
西村監督はそういってタバコの火を消して歩いて行った。

僕は監督の背中が見えなくなるまで見つめた。
そして再び決めた。こんなことで負けてられない。やっぱり僕は甲子園に行く。

スマホの画面を見ながら僕は今までの人生を思い出す。懐かしいな。僕の野球人生の始まりはこんな感じだった。
少年野球のホームラン以来、強くなるのに必死だったのに、今はなぜかこうして僕は人を集めている。
まだ高校生になって試合もしていないのに、楽しいとさえ思ってしまう。

そんなことを思い返していると、いつものようにひよりからメッセージが届いていた。

お兄いへ
学校はどうですか?
楽しい?
ひよりにもどんなところか教えてね。
野球頑張ってね。
byひより

僕はひよりに返信をする。

ひよりへ
ああ、学校はいいところだ。
今は野球をするのに人を集めているところなんだ。
ひよりはどうだ?勉強は楽しいか?無理はするなよ。

一通り文章を打って送信する。
するとすぐに返信がくる。

お兄い
勉強は面白いよ。半田さんがお兄ちゃんの血を受け継いでるってさ!
早くひよりも学校に行きたい。そして勉強を教える人になるんだ!
お兄いも人集めファイト!

ひよりの返信メールを読んで僕はやっぱり複雑になる。
病院以外は地下室から出してもらえていないひより。
僕だけがこんな外の世界で楽しんでいいのだろうか。
もっと僕も苦しむ必要があるんじゃないか。

スマホを寮母室に返すと、ふと夜空を見上げた。
どこかでひよりも、この星を観ているだろうか。
ーーそんなことを考えながら、僕はまた一歩を踏み出す。