プレイボール

月曜日、僕はいつもの日課のランニングを済ませ朝食をとるために食堂へ向かう。
いつものカウンターで1人で朝食をとる。
結局あれから仁太や玲子さんとも会っていない。
放課後また集合することになっているけど、金曜日までに人が集まるのか不安がよぎる。

朝食を早々に切り上げ僕は支度をして校舎へ向かう。
1年の教室に入ろうとすると何やら教室の前で数人の生徒が集まっていた。
僕は早く教室に入りたくて入口の集団に近づく。どうやら集団の中心にいるのは仁太のよう。
仁太が一人一人に紙を配っている。
紙を受け取った生徒が友達同士でわいわい何やら話し込んでいるようだ。

「あ、一郎君、おはよう!」
仁太が僕に気づいて声をかける。

「ああ。仁太おはよう。朝から何やってんだ?」
僕は仁太が手に持っている紙の束に視線を移す。

「まあまあ、よかったら一郎君もやってみて!九条さんにみせてもらった問題集を参考にしたんだ!
ま、一郎君に限っては正解しても特典をあげられないけど。」
そう言って仁太が僕に紙をよこしてきた。

僕は紙を持って席につく。
どうやら九条さんが厳選した野球に関する問題を配っているようだ。
僕も問題に目を通す。

【問題1】
高校野球の試合で、ピッチャーが140km/hの速さでボールを投げました。
このボールがバッターから18.44m離れたホームプレートに一直線に進むとします。
(1)ボールがホームプレートに到達するまでの時間を求めなさい。
(2)もしバッターがホームランを打ち、ボールが打球速度150km/hで、打ち出し角度30°で飛んだとします。
この時、打球は水平に何メートル飛ぶか求めなさい。
【問題2】
あなたの友人の名前を1人書きなさい。

※全問正解の中から抽選で2名様には生徒会へ立候補できる権利または、希望する外部の教師を推薦できる権利を与える。
名前を書いて提出しなさい。

以上

なるほど。。。それで問題を解こうと人が群がっていたのか。
けど相談アリにしたら全員正解になるのでは?ここは偏差値の高い進学校である。
1年生はスマホが使えないし、教室内で回収しているから図書室などへはいけないけど、これでは皆同じ回答を出すに決まっている。
そんなんことを思っていると、隣の席の男子が話しかけてきた。

「おい、お前の名前、なんていうんだ?最後の問でお前を友人として書いていいか?」
普段は全く喋ったことのないのに急に話かけてきて驚く。

「えーと、佐藤一郎ですけど。君は、渡辺八尋(わたなべ やひろ)君だっけ?」
遠慮というのを知らなさそうな話し方をする渡辺君に僕は尋ねる。

「そう!八尋って読んでいいぜ。俺も、お前のことは一郎って呼ぶな。で名前借りていい?」
なんだか体育会系のノリではっきりとものをいうやつだなと思いつつ僕も答える。

「ああ、別に名前くらい構わない。なんだ、八尋も生徒会に入りたいのか?」
僕も負けじと距離感を詰めていく。第一印象で人は決まるというが、見下されているような感じがしてならない。

「いや、俺は生徒会には興味はねえ。もう一つの方だよ。外部の教師を推薦できる権利ってやつ。
俺は将来宇宙飛行士になりたいんだ。だからこの前宇宙に行った白瀬飛行士を推薦したい。それだけだ。」
そんな大きなことを恥ずかしげもなくさらっと言う八尋に僕は少し羨ましさを感じる。

「そうか。まあ、なるようになるといいな。」
そう言って僕はテキトーに返答した。

紙の受付は授業が始まるまでということだったので、皆チャイムのなるギリギリまでわいわい賑わっていた。