「成瀬くん！みて！ペンギンがいる！！」


そう言いながら水槽の中をじっとのぞく彼女。


「可愛い、、、」


そう言いながらニコッとペンギンに向かって笑う彼女を横目に、


僕は未だどうしていいかわからず


「そ、そうだね。」


と愛想笑いを浮かべることしかできていなかった。


「もぉー。成瀬くんもペンギンさんを楽しもうよ！こっちきて！」


そう言って彼女はぐいっと僕の手を引っ張った。


「成瀬くんは好きな生き物はいる？」


「うーん。僕はイルカが好きかな。」


「え！そうなんだ！一緒！！イルカ、可愛いよね。」


「うん、イルカはすごく頭のいい動物なんだ。それで愛嬌もあって好奇心旺盛だから社交的って言われるんだ。僕はイルカの」


そう言いかけた時、とても後悔した。


昨日デートの時気をつけることランキング的な記事に、自分の知識をひけらかさす男はドン引きされると書いてあったんだった。


やってしまった。


おそるおそる彼女を見ると、


「えー！！なんで成瀬くんそんなこと知ってるの！？すごい！もっと知りたい！」


と目をキラキラさせながらこっちをみてきた。


中学生の時、男女問わず人気だった理由が今わかった気がする。


「.....ひかないの？」


「え！？なんで！？」


「いや、僕だけがはしゃぎすぎちゃったかもって」


「ひかないよ。なんか、成瀬くんのことを１つ知れて嬉しかった。」


彼女の言葉はすごく魔法みたいだ。


どんな氷でも一瞬で溶かしてしまうほどの。


「そっか、ありがとう。」


「うん！あ！みて！あっちにイルカショーの会場があるらしいよ！」


「あ、本当だ。」


「イルカショーに行ってもいい？」


「もちろん！」