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ルーカスの身体はまだ自由が利かなかった。
それでも、夢の余韻が続くなかで、ぼんやりとではあるが頭は動いた。
(なんだ、違うじゃないか……)
当時は父親に対する憎しみと、まんまと利用された悔しさでわからなかったが、今なら簡単にわかる。
あのときの鼓動の理由はそうではなかったと。
今日の昼間と同じ種類のものだった。
(それなのに前世では父親への憎悪で気づけなかったんだな)
婚姻後は、父親からブランカ宮殿に住むことを許可された。
国王の体調に少しでも異変があれば、いつでも聖女が駆けつけることのできる距離に縛りつけられたのだ。
「聖女様は、軽い症状のときでも国王陛下にお触れになる」
眉をひそめながらそう告げ口してくる者もいたが、そんなことはアーロンもよく知っていた。
常に取り入っておこうという魂胆だろうと思った。



