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「私たちは今後の研究の進め方について協議しますので、君たちは今日のところはここまででいいですよ」
解放されたルーカスとマルティーナは、ともに研究室をあとにした。
廊下に出ると同時に、マルティーナが『ふう』と息を吐いたのが聞こえた。
「疲れたか?」
「はい。緊張で疲れました」
「取り囲まれて注目されていたからな」
「それもありますが、留学との交換条件である私の治癒魔法に失望されるかも……と心配だったので」
「失望なんて!」
ルーカスが声を荒げてしまったせいで、マルティーナは目をパチパチさせた。
「……すまない。でも、先生たちの反応で理解できただろう? 君の治癒魔法の価値が」
しかし、マルティーナは弱ったように微笑んだ。
(自分に自信がないんだな。この国では貴重な人材だというのに。それだけルーボンヌでは肩身の狭い思いをしてきたということか)
そこは聖女だったヴァレリアとは大きく違うところだ。
ヴァレリアは反対に、神聖魔法に関してだけは絶対の自信をもっていて、惜しげもなく使いたがっていた。



