「これは何の効果もない、ただの手袋です。たとえ治癒魔法を使用するときでも、特に異性には直接触れないほうがいいと、ルーボンヌの神学校で習いました。私たちからすれば、神からの恵みである神聖力を使わせていただくわけですから、敬虔な気持ちしかないですが、誤解を受けるケースもあるとかで」
ルーカスは覚えがありすぎて胸が痛くなった。
ヴァレリアがアーロンの父親に、直接触れるのを苦々しく思っていた。
そして、アーロンにも触れて治癒魔法をかけようとしてきたときには、大金で買われた聖女がアーロンに取り入ろうとしているのだと思い、徹底的に拒絶した。
(ヴァレリアもマルティーナと同じ気持ちだったに違いないのに!)
今ならわかるが、当時はわからなかった。
マルティーナはその後も、観葉植物の病気や用務員であるカハールの腰痛を治していった。



