「そうではなくて、ルーボンヌ神国からの留学生は前例がないから、困っていないか気にかかっただけで……」
「ふーん、なるほどね」
顔には『まあ、そういうことにしておいてやるか』と書いてあった。
ウーゴの醸す生温かい空気が癪に触りはしたが、そこはぐっと堪えることにした。
(どうしていい思い出などないはずのアンダルイドに戻ってこようと考えたのか……)
マルティーナの考えなど、ルーカスには推し量ることはできない。
ならば、せめて歓迎パーティーでは、マルティーナのことを本当の意味で歓迎してやりたいと思った。
それは、ルーカスなりの罪滅ぼしのつもりだった。
だからこそ、王子権限を使ってまでして、彼女のために歓迎パーティーのメイン料理を変更させたのだ。
(それなのに、おかしいじゃないか……)
困惑しきりだった。



