聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました


 ダニエラが、キャビンから大きなトランクケースを下ろした。

「よいしょっと!」

 トランクの中身は衣類が主なはずだが、かなりの重量になってしまった。
 アンダルイド語の辞書が重いのだろう。
 留学が決まって以降、必死に勉強してきた。
 それでも不安で、現代語のほかにも古語に専門用語にと、いくつもの辞書を詰めてしまった。

 あるいはガイドブックが原因かもしれない。
 長期休暇中は、アンダルイド国内を見て周りたいと考えている。
 そこで、びっしりメモを書き込んだものを数冊ほど底の方に忍ばせたのだった。

「あれこれ詰めてしまってごめんなさい」
「これしきのこと、大丈夫ですよ!」

 入寮日は本日、と学院側から指定されている。
 同じ新入生と思しき少年少女たちが見送りの家族に手を振ると、皆ひとりで大荷物を抱えて門の中へと入っていく。
 髪も瞳もブラウンだから、アンダルイド人だろう。

(あの中に入ったら、私目立つかしら?)