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マルティーナは幼少期から呼吸するのと同じように、大気中に浮遊するエネルギーのようなものを体に取り込むことができた。
それが特異な能力だということに、気づきもしなかった。
そして4歳になった頃、それまでは吸収するばかりだったエネルギーを反対に放出できること、さらには放出したときに不思議な現象が起こることを偶然発見した。
両親は兄姉の教育と生まれたばかりの妹の世話に忙しく、放っておかれることの多かったマルティーナは、新しい遊びを見つけたと思った。
たちまち夢中になった。
こうして、遊びの延長で自然魔法の使い方を習得してしまったのだった。
得意気に家族に披露したあの日のことを、忘れることはないだろう。
日が暮れ、使用人が邸中の明かりを灯そうとしているところを、代わりに火魔法で灯してみせたのだ。
両親は瞬きし、それから狂喜乱舞した。
それまではマルティーナのことをどこか軽んじていた兄姉たちさえも、マルティーナのことを手放しで褒め称えた。
果ては聖女かと、家族が諸手を上げて大喜びし、お祭り騒ぎになったのを今でも記憶している。



