聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました


「……はい。殿下の仰る通りです」

 大神官は泡を食って、言葉を失っている。

「マルティーナはアンダルイド王国の第3王子妃となりますが、聖女の称号を頂戴できるのであれば、やぶさかではありませんよ」
「……それは……前例がありませんので、国に持ち帰って検討を……」
「聖女が我が国の王子妃になった例ならありますが? まあ、我々にとってはどちらでも構いませんよ。愛する彼女が連れ戻されるような事態にさえならなければ」

 以降の会談は、中身のない上部だけの会話が少しと、形だけのあいさつのみで終わってしまった。

「遠いところをわざわざお越しいただいたのに、もうよろしいのですか?」
「ええ。マルティーナ嬢の神聖魔法を確認することができ、目的は果たせましたので……」

 裏の目的が果たせないとわかった以上、長居は無用ということらしい。
 ルーカスがこっそり孤にした目で笑いかけてくるものだから、マルティーナはつい『ふふっ』と声を漏らしてしまったのだった。