「半年もあって何も進展していないのか……それでも、お前の気持ちくらいは伝えたんだろうな?」
「……いいえ」
大きく目を見開いたあと、大袈裟にため息を吐かれた。
「ですが、僕にも事情があってですね、」
「どんな?」
「うっ……どんなってその……」
(あれから前期試験に、ブランカ宮殿の訪問、マルティーナの神聖魔法の検証、それから園芸部で畑仕事があって……)
大急ぎでこの半年間を思い返してみた。
けれど、気持ちのひとつも伝えられなかった事情が見当たらない。
「ええっとですね……」
目線が天井をさまよった。
そこに、その事情とやらが浮遊しているというわけでもないのに。
「私など、お前の母さんに出会ったその日に求婚したというのになあ」
「父上と比較しないでください。父上と母上が出会ったのはお見合いの席ですよね?」
「たとえ学院だったとしても、半年はかからなかったな」
(そうかもしれない……)



