そう言い聞かせても、今この瞬間にもこっちにやってくるルーカスの視線が、ヴァレリアに恋心を抱いていたアーロンのそれとそっくりに見えてしまうのだ。
(勘違いしたらダメよ。そんなこと起こりっこないんだから……)
「難しい顔をして、どうかしたのか? 僕はまだ飲んでないんだが……」
パウラが期待をこめて早口に言った。
「早く! 早く飲んでみてください!」
「ああ、そうする」
鍋の周囲にひと気が少なくなってきているのを確認してから、薬草茶を取りにいき、そうして飲みながら戻ってきた。
「すっきりした気がするが、明らかに普通の薬草茶を飲んだあとの清涼感とは違う物だな!」
「そうですよね! 疲れが癒されてますよね」
「ああ。初回から大成功じゃないか!」
マルティーナは、その笑顔を見て、反射的に好きだと思った。
(ああ、そうだわ。好きなんだわ)



