聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました


 どうかしている、と我ながら思う。
 けれど、どうしようもないのだ。

 ふとした瞬間に、『あのときルーカス様はああだったな、こうだったな』と思い出すが、それはアーロンのことだったりする。
 そもそもルーカスとは知り合って1年も経っていなくて、ルーカスについて懐かしく思い出す出来事などあるはずがないのだ。

(ヴァレリアになりきっていたあの夢を、まだ引きずってるのよね……)

 目覚めたあとも、自分とヴァレリアの境界が曖昧なままだ。
 まるでヴァレリアと自分がひと続きのように錯覚してしまう。

 目下最も困っているのは、ヴァレリアに向けられていたアーロンの視線と、自分を見ているルーカスの視線が同じに見えてしまうことだ。

(そんなこと、ありえない!)