ルーボンヌを出たときには、もう長くないだろうと踏んでいた。
自分とアンダルイド国王のどっちが先かと考えていたくらいだ。
なのに、想像以上に長く生きることができた。
しあわせだったと思う。
けれど、どこかで淋しさも常に抱えていた気がする。
聖女の素質を見出されてからというもの、血のつながった家族とは1度も会っていない。
両親、祖父母、兄姉弟妹の誰ともだ。
ずいぶんと遠くへ来てしまった。
一応夫がいるにはいるが、名目上の夫婦であり、家族という感覚はない。
“雇用主のご子息”くらいの感覚だ。
それでも、ヴァレリアのことを気にするアーロンの視線には気がついていた。
(それほど私のことを気にかけるのなら、ひと言くらい声をかけてくれればいいのに……)
と密かに思っていた。
元・平民の、形だけの妻に対する接し方がわからないのだろう。
(不器用な人だもの)



