聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました




(ああ、もう時間は残ってないんだわ……)

 仕方のないことだと思う。
 けれど、その一方でアーロンのことが心配でならない。

 アンダルイド王国に来たときには、彼女の体はボロボロの状態だった。
 聖女として、神聖魔法を使いすぎたのだ。
 皮肉なもので、神聖力は治癒魔法にもなるのに、強い神聖力を頻繁に取り込みすぎると、身体は壊れるようになっているらしい。
 そしてそれは神聖魔法では治癒できなかった。

 誰もそれを教えてはくれなかった。

(どうせ教えてもらったところで、苦しんでいる人を目の前にして神聖魔法を使わないという選択はなかったし、実際自分で気づいたあとでさえも使い続けてきたのだけど)

 ヴァレリアは貧しい農村の生まれだった。
 当時はリアナという名前だった。
 それが強大な神聖魔法が使えると判明するや否や、修道院が引き取りにきた。

 その際に、『もっと聖女候補に相応しい名前を』と改名させられた。
 聖女という存在は、教会の教えを体現できる品格とやらが必要なのだそうだった。