聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました

 ルーカスがポツリと言った。

「……王宮、というのはどう思う?」
「王宮?」

 思いも寄らないワードが出てきた。

「外国人でも勤められるんですか?」
「勤めるというか、慈善事業のような……?」

 それを聞いたマルティーナはムッとした。

「それは無償で治癒魔法を使え、という意味ですか? 確かに神からの恵である神聖力が元ですが、それでは生活できません!」
「あっ、いや。そういう意味では……」

 それほど強く言ったつもりはなかったが、ルーカスはたじろいでいる。

(相談を持ちかけた立場で言い過ぎかしら?)

 しかし、自立できなければルーボンヌに帰るしかなくなるのだ。

「私はアンダルイドで生計を立てたいんです」
「も、もちろん、分かっているよ。僕が言った『王宮で』というのは、対価っていう形でもらうわけではないのだけれど、生活はきちんと保証されていて……」
「やっぱりお給金はもらえないんですよね?」
「そうなんだけど……あー、うまく言えないな……」

 しどろもどろで要領を得ないまま、馬車はブランカ宮殿に近づいていた。