アーロンは父親とヴァレリアがいなくなって、ようやくヴァレリアの慈愛を理解することができた。
余生はブランカ宮殿にこもって暮らした。
(ヴァレリアへの償いのつもりだったが、なんだ……ただ惚れていただけじゃないか。それもただのひと目惚れだ。そんな簡単なことが、どうしてわからなかったのか……)
自分の前世ながら笑ってしまう。
不思議なことに、ヴァレリアの神聖魔法はヴァレリアの死後も消えなかった。
現在もなお残っている。
(ヴァレリアが生きているうちに、治癒魔法も受け入れていたらな……)
後悔なら前世からし続けているが、それでもし足りない。
(マルティーナの前でわざと怪我でもしてしてみようか)
本気で考えているわけではなかったが、そうしてみたい気がした。
(そのとき僕は何を思い、どう感じるだろうか……)
考えているうちに、ルーカスは再び眠ってしまった──



