玉響の花霞    弍

「‥‥‥筒井さ‥‥も‥‥ムリ‥ンッ」


体力は運動してるからある方だけど、
体に全くチカラが入らなくて呼吸も
苦しくて体中が熱い‥‥


クタッとする私をそのまま
膝の上に乗せると、今度は仰向けに
寝た筒井さんの上になり、そのまま
力なく胸板に倒れ込んだ。


『俺はまだ足りないんだがな‥。』


「ンッ!!!アッ‥嘘‥‥」


もう力が入らない私は下から与えられる
律動にどうすることも出来ず、
押し寄せる甘い感覚にしがみつく



何度も抱いてもらってたけど、
こんなに激しいのは知らない‥‥


ただこういう事を教えてくれたのが
筒井さんで良かったと思う‥‥。
他の人となんて考えたくもない‥‥。


こんなに素敵な人なのに、
様々な事情や想いがあって結ばれなかった彼女が、筒井さんに対して少しでも悲しい思いをさせた事を忘れずに生きて
いて欲しい‥‥。
きっと、私には絶えられないほど
筒井さんは沢山傷ついて生きて来たと
思うから‥‥



日曜日はランチを終えた後
スーパーに寄ってくれた筒井さんに
お買い物をしてから家まで送って頂き、
また通常通りの1週間が始まった。



「おはようございます。」


『井崎さんおはよう。』


真夏を前に、涼しいエントランスで
掃除をする私と佐藤さんは、
出勤される社員さんに頭を下げて
挨拶をしていた。


夏服は動きやすいのにオシャレで
可愛いからとても好きだ‥


2年前まではこの5センチのヒールの
靴にも慣れなくて足が震えていたし、
姿勢良く立つのにも苦労したけど、
掃除しながらでもふらつかなくなり
早歩きも余裕になっている


佐藤さんのような上品さは
まだまだ足りないけど、地道に
少しずつでも大人っぽく素敵な
女性になりたい



『おはようございます。』


トクン


スーツ姿で髪の毛も整えた筒井さんが
優しい笑顔を見せると、佐藤さんと
2人で丁寧にお辞儀をした。


『「おはようございます。」』


また少ししたらフランスに戻られる
筒井さんが目の前にいる。


そしてこれからもまたこの日常が
やってくることに胸が熱くなり
思わず泣きそうになってしまう


オンとオフはしっかり分けられる
方だから、私も成長した姿を
見てもらえるように日々頑張ろう‥