玉響の花霞    弍

隣にいることが私の最大の我儘だから、
筒井さんの我儘の方が本当は聞きたいのにな‥‥。



「ありがとうございます‥‥。
 わ、私も‥‥‥筒井さんと一緒に
 決めたいです‥」


『フッ‥‥‥いい子‥それでいい。」



我慢をしてまで一緒にいて欲しくないと
筒井さんは言うけれど、待ってると
決めたのも自分自身の諦めたくない
我儘な気持ちだ。



数年前には叶うはずのない諦めた
恋心だったのに、こんなにも大切に
してもらえ、これ以上何かを望んだら
罰が当たりそうにさえ思える


「また筒井さんとマスターに
 会いに行きたいです。」


『そうだな。じゃあ帰りに寄ろう。』


都内で行われていたラボや
世界的有名な画家の古典など、
偶々行けた場所で楽しんだり、お寿司屋さんに行ったりと、昼間から筒井さんとこういうことをしたことってないかもと思いながら楽しく過ごした。


デートみたいなんて行ったら
叱られてしまうかもしれないけど、
さりげなく腰や肩に触れる手や、
向けられる優しい表情に毎回
ドキドキした1日だった気がする


カランカラン


『こんにちは。‥‥おや、筒井さん
 お帰りだったんですね。
 井崎さんもいらっしゃい。』


「マスターこんばんは。」


えっ?


筒井さんと2人で入った店内の
カウンターに見つけた人物に驚き
思わず立ち止まる


『よっ。久しぶりだな滉一‥‥』



私服姿がまた違った印象のジュニアが
珈琲を飲んでいて、筒井さんに軽く
手を挙げて挨拶をした。



「あ、あの‥‥前に助けていただいた
 お礼でここに伊野尾さんを連れて
 来たことがあるんです。」


筒井さんも驚いていたから、
私が連れてきたことを言っていない
ことに気付いて慌てて話した


『井崎さんもこんにちは。
 偶々来て君たちに
 会えるとは思わなかったよ。』



『久しぶり‥‥元気だったか?』


トクン


ジュニアに頭を下げてから
腰に手を添えられてカウンターの方に
一緒に行くと、一つ席を空けて
筒井さんとそこに座った。


蓮見さんや亮さんと同じような
テンションで会話する方思いきや
そうじゃなくてなんとなく気まずい‥


『まぁ‥‥そうだな。最近は色々あって
 バタバタして疲れてるかな。
 滉一こそ帰国申請出したって聞いた。
 もう向こうはいいのか?』


『ああ‥‥。
 マスターこんにちは。オススメを
 お願いします。』


「あ、私も同じものをください。」


おしぼり受け取ったあと、
マスターに注文してからもなんとなく
気まずくて2人を見れないでいる。