玉響の花霞    弍

置きっぱなしのスマホを見れば15時を
まわったところで、昼ごはんも
食べないまま寝ていたことに驚いた


「あれ‥‥?‥‥蓮見さんたちは
 いないんですか?」


辺りを見渡しても静かで誰もいないから
筒井さんだけ帰ってきたのだろうか?


『お前があまりにも気持ちよさそうに
 寝てたから一旦帰って晩御飯は
 ここに食べに来るってさ。』


えっ!?


全く気配にすら気付かず寝てたなんて、
変な顔して寝てなければいいけど、
みんなに見られてたんだ‥‥



『フッ‥‥。俺も少し寝るよ。
 お前ももう少し一緒に寝る?』


ドクン


髪が乱れていたのか髪の毛を撫でながら
整えてくれる手と、優しく微笑む顔に
心臓がトクンとはねる。


寝起きに目が覚めるほどの破壊力の
ある顔面力に思いっきり首を横に
振ると、筒井さんは笑いながら寝室の
方へ行ってしまった。


ふぅ‥‥‥よく寝た‥‥。
静かにご飯の支度をしようかな‥
私とばかりいるから筒井さんもゆっくり
出来てないと思うし‥‥。


うーんと伸びをしてから大きな
欠伸をすると、立ち上がりキッチンで
お酒に合うおつまみを作ることにした



朝食用に買っておいたフランスパンで
トマトのブルスケッタを作りながら、
ジャガイモを蛸をオリーブオイルとニンニクで炒めた。


鶏胸肉を下拵えしてから、
鶏ハムにする為、低温調理でゆっくり
火を通し、サッパリして美味しい
よだれ鶏もなんとか時間内にでき
みんなが来る前に常備菜も含めて
テーブルに準備をしていた。



ガチャ


16時近くになり、そっと寝室を
覗くとまだ寝息が聞こえていたので
静かにドアを閉めてから私も珈琲を
淹れて休憩をすることにした。


あと何時間一緒にいられるのだろう‥
考えてはいけないのに、その時が
近付けば近付くほどどうしても
この当たり前の日々が終わってほしく
ないと考えてしまう


私が出来る事は、
筒井さんが今みたいに向こうでも
リラックスして眠れるように
願うことなのかもしれない‥‥。


ガチャ


「あ‥‥起こしちゃいましたか?」


まだ眠気眼でこちらに来た
筒井さんが、私を腕の中に抱き締めて
来たので、私も背中に手を回した。



温かいこの腕の中から出たくない‥‥。
この温かい空間は体の強張りがほぐれて
いき、安心感に包まれるから‥‥。



『俺も珈琲を飲んでもいいか?』


「ふふ‥‥勿論です。一緒に
 淹れますね。」



こんな風に甘えてくれる筒井さんを
今は全部受け止めたい‥‥


もう1人分の豆を引く間も
後ろからお腹に手を回され離れずいて
くれたけど、この時間も愛しくて
私は何も言わずき受け入れた。



『フッ‥‥早速入れるのか?』

「はい‥‥美味しそうなので。」


先ほどいただいたマヌカハニーを
ティースプーン一杯ほど入れてから
ゆっくりかき混ぜると、冷ましながら
口にそっと含んだ


はぁ‥‥美味しい‥‥‥
蜂蜜とは違うけど、程よい上品な甘みで
とても飲みやすい。


素敵なチョイスのお土産に、料理にも
活かせそうだし、これからの楽しみが
出来た気がする


「筒井さんも飲んでみます?」


後ろに立つ筒井さんにマグカップを
持ち上げて見上げると、そのまま唇を
塞がれてから唇を舌で舐められた。


「ンッ!!‥‥つ、筒井さん!!」


『‥‥甘いな‥‥ご馳走様‥‥』


「えっ?あの‥‥ンンッ‥‥」



マグカップを私の手から取ると、
もう一度今度は深くキスを落とし、
キッチンで何度も繰り返されると
息が苦しくなりつつもとろけるような
甘い時間に身を委ねた。