玉響の花霞    弍

こんな時にもしも1人だったら
ここまで来れなかったかもしれない


迷惑かけっぱなしなのに、
いつも助けてくれる蓮見さんに
涙が出そうになる。


自分の周りの恵まれた環境に
感謝しつつも、支えてもらいながら
受付に向かった。



『すみません、今日急患で運ばれた
 筒井 滉一と仲崎 亮ですが、
 何処に行けば会えますか?』


私を待合の椅子に座らせて
くれた後、蓮見さんが救急窓口の方と
話をしてくれている


手がまだ小刻みに震えてる‥‥


こんな経験したのは、父が亡くなった
時以来だから余計に怖い‥‥
大丈夫‥‥絶対大丈夫‥‥



『霞ちゃんお待たせ。歩ける?
 無理なら行ってくるからここで
 待ってて。今治療してるみたいだから
 様子見てくる。』


「行きます‥‥一緒に‥‥」


『ん、わかった。
 今だけ手を繋いでいい?』


差し出された手に震える手を重ねると
力強く立たせてくれてゆっくりと
蓮見さんに手を引かれながら
一歩ずつ歩き始めた。


薄暗い夜間の院内の廊下を歩いて
行くと、曲がった先の突き当たりの
長椅子に腰掛けている人に気付き
蓮見さんが小さく溜め息を吐いたのが
分かった。



『亮!』


亮さん‥‥亮さんだ‥‥


『おい‥大丈夫か?』


『ああ、悪かったな‥‥
 スマホが割れてあれから操作が
 出来なくなった。』


亮さんの隣に座り顔を覗くと、
私の顔を見て少し笑うと
頭を撫でてくれた。


『井崎さんごめん、連絡できなくて。
 怖かったし不安だったよね‥‥。
 送り届けれなくてごめん。』


我慢していた涙が両目から溢れてしまい
隣に座る蓮見さんにも頭を撫でられる。


首を横に大きく振ることしか
出来ず震える私は、二人の優しい
接し方に子供のように今は
泣くことしか出来ない‥‥


『‥‥滉一は?』


ドクン


ここに来た時に居なかった筒井さんの
ことを聞くのが怖かった‥‥


だって‥‥目の前の扉に書かれていた
場所が手術室だったから。



『交差点でスピードを超過した車が
 信号を無視して来てさ‥‥‥
 滉一が乗っていた助手席側に
 突っ込んだ。そのまま俺もバースト
 してなんとか止まったものの、
 滉一は意識不明で運ばれた‥‥。』


嘘!!‥‥‥そんな‥‥


吐きそうなくらい気持ち悪くなり、
両手で口元を押さえると次第にまた
体が震え始めた