その晩のこと。

「・・・眠れないわ・・・」

吉祥寺のある部屋で、お七はため息をついていた。

寒々しいほどに広々とした室内には、お七の寝ている布団以外には何も無い。

ここの和尚・西運はとても慈悲深く、他にも逃げてきた町民たちにも部屋を貸していた。

しかし、お七は年頃の娘だから、という理由によって、一人だけ特別に個室を用意してくれたのだ。

十五歳とはいえ、やはり恥じらいはある。

故に、この和尚の配慮は、お七にとっては有難いものであった。

しかし・・・

「・・・落ち着けないわね」