「はーあ」
窓を眺めながら、わざとらしく大きなため息をついた。
最近、気がつけばいつも晴翔のことを考えてしまう。今も窓の奥の空を眺めながら、頭の中は晴翔のことでいっぱい。
「何ぼーっとしてるの。昼休み終わっちゃうよ」
一華が声をかけてくる。
「やばい、お弁当食べる時間なくなっちゃう」
慌ててカバンの中から弁当箱を取り出す。
「理菜、最近ぼーっとしてることが増えたね」
一華の一言にドキッとする。
「部活、そんなに大変なの?それとも……」
一華が意味ありげにニヤリと笑う。
「好きな人でもできた?」
一華の不意の一言に、思わず心臓が飛び出しそうになる。
「何言ってるの、そんなわけないでしょ!」
オーバー気味に大きく手を振る。好きな人がいるって誰にも知られたくない。
「冗談だよ。理菜が部活大変なのは知っているからさ」
一華が楽しそうにケタケタ笑う。もうびっくりさせないでよね。
「だって理菜はエースとして超期待されてるんでしょ?そりゃ部活も大変だよね」
「そんなすごいもんじゃないよ」
私が所属するのは少林寺拳法部。マイナーな競技だから部活のある高校もそう多くない。私の通う北丘高校は全国大会の常連校として学内でも有名な部活なんだ。全校生徒が少林寺拳法の名前は聞いたことがあるという感じだ。
六月に北海道支部大会、七月には高体連の全国大会がある。十月の今は十二月の新人戦に向けて練習中。
私も一年生ながら支部大会に出場した。そしていきなり全国大会に進んじゃったの。全国大会ではあんまりいい成績は残せなかったんだけどね。
でも、一年生で全国大会に進んだから私の名前が色々噂されちゃってる。
武道が強い女子ってあんまり可愛いイメージなくない?本当はもっと可愛くなりたいのに。
チラッと一華にバレないように晴翔を見る。黙々と一人でお弁当を食べている寡黙なその姿がなんだか可愛い。
一華のお弁当はいつも彩りが綺麗だ。女子高生の可愛いお弁当って感じ。しかも毎朝、自分で作っているという。
それだけでも驚きなのに、一華は化粧や制服の着こなしも上手だ。少女漫画の女子高生並みに女子力が高い。それに比べて私は全然女子力がない。
「おーい、理菜」
教室の出入り口から修也が私の名前を呼ぶ声が聞こえる。
「いたいた。な、数学Iの教科書貸してくれよ」
「また忘れたの。もうしっかりしてよ、高校生になったんだから」
私と修也のやりとりを見て一華は隣でくすくす笑っている。
私と修也は小学生の時からの腐れ縁だ。家が近いからよく一緒に遊んでいた。
小学三年生の夏休み、たまたま近所で少林寺の体験会があるからと言われて二人で行ってきた。体験会に参加した修也が少林寺を習いたいと言い出した。そしてなぜか私も一緒に習うことになったのだ。
だから高校から少林寺を始める人が多い大会で元々習っていた私は大きなアドバンテージがある。それが私が一年生ながら全国大会に出場できた理由だ。
「理菜の弁当は相変わらずコロッケが多いな。さすが、武闘派女子」
「余計なこと言わないでよ!」
そういって修也が笑う。クラスのみんなが私と修也に注目する。もう、すっごく恥ずかしいんですけど。
「それじゃ、ありがとな。また今度も頼むぜ」
修也が教室から出ていく。いっつも忘れ物しないでよ。
「ねえ、理菜と修也君って仲がいいよね。付き合ったりしないの?」
「まさか、あり得ないよ。小学生からの腐れ縁ってだけ」
修也が私のところによく忘れ物を借りに来るせいで、あらぬ誤解を受けることが多い。
私が好きなのは修也じゃなくて晴翔なのに。
コロッケを口の中に放り込む。いつ食べてもうまい。これはやめられん。
弁当を食べ終わった晴翔は小説を読んでいた。私の好きな昼休みのいつもの光景。
クラスの男子はお昼を食べ終わるとどこかに遊びに行くことが多い。中には早弁をして昼休みはずっと遊んでいる人もいる。だけど晴翔はいつも教室で小説を読んでいる。
晴翔の席は三つ隣の列の前から二番目。一番後ろの私とはだいぶ離れている。晴翔と接点のない私は、ただ眺めているばかりだ。
「そういえば、明日って席替えだね」
一華が思い出したように呟く。私のクラスは担任の先生の方針で席替えは三ヶ月に一度。この席は先生からはバレないし、適度に晴翔のことを眺められるから好きだ。
でも、本当は晴翔ともっと近くになりたい。晴翔と話せるようになりたい。
「私たちも、もっと近くになりたいよね」
「うん、そうだね」
一華の言葉に私は別なことを考えながら頷いていた。
窓を眺めながら、わざとらしく大きなため息をついた。
最近、気がつけばいつも晴翔のことを考えてしまう。今も窓の奥の空を眺めながら、頭の中は晴翔のことでいっぱい。
「何ぼーっとしてるの。昼休み終わっちゃうよ」
一華が声をかけてくる。
「やばい、お弁当食べる時間なくなっちゃう」
慌ててカバンの中から弁当箱を取り出す。
「理菜、最近ぼーっとしてることが増えたね」
一華の一言にドキッとする。
「部活、そんなに大変なの?それとも……」
一華が意味ありげにニヤリと笑う。
「好きな人でもできた?」
一華の不意の一言に、思わず心臓が飛び出しそうになる。
「何言ってるの、そんなわけないでしょ!」
オーバー気味に大きく手を振る。好きな人がいるって誰にも知られたくない。
「冗談だよ。理菜が部活大変なのは知っているからさ」
一華が楽しそうにケタケタ笑う。もうびっくりさせないでよね。
「だって理菜はエースとして超期待されてるんでしょ?そりゃ部活も大変だよね」
「そんなすごいもんじゃないよ」
私が所属するのは少林寺拳法部。マイナーな競技だから部活のある高校もそう多くない。私の通う北丘高校は全国大会の常連校として学内でも有名な部活なんだ。全校生徒が少林寺拳法の名前は聞いたことがあるという感じだ。
六月に北海道支部大会、七月には高体連の全国大会がある。十月の今は十二月の新人戦に向けて練習中。
私も一年生ながら支部大会に出場した。そしていきなり全国大会に進んじゃったの。全国大会ではあんまりいい成績は残せなかったんだけどね。
でも、一年生で全国大会に進んだから私の名前が色々噂されちゃってる。
武道が強い女子ってあんまり可愛いイメージなくない?本当はもっと可愛くなりたいのに。
チラッと一華にバレないように晴翔を見る。黙々と一人でお弁当を食べている寡黙なその姿がなんだか可愛い。
一華のお弁当はいつも彩りが綺麗だ。女子高生の可愛いお弁当って感じ。しかも毎朝、自分で作っているという。
それだけでも驚きなのに、一華は化粧や制服の着こなしも上手だ。少女漫画の女子高生並みに女子力が高い。それに比べて私は全然女子力がない。
「おーい、理菜」
教室の出入り口から修也が私の名前を呼ぶ声が聞こえる。
「いたいた。な、数学Iの教科書貸してくれよ」
「また忘れたの。もうしっかりしてよ、高校生になったんだから」
私と修也のやりとりを見て一華は隣でくすくす笑っている。
私と修也は小学生の時からの腐れ縁だ。家が近いからよく一緒に遊んでいた。
小学三年生の夏休み、たまたま近所で少林寺の体験会があるからと言われて二人で行ってきた。体験会に参加した修也が少林寺を習いたいと言い出した。そしてなぜか私も一緒に習うことになったのだ。
だから高校から少林寺を始める人が多い大会で元々習っていた私は大きなアドバンテージがある。それが私が一年生ながら全国大会に出場できた理由だ。
「理菜の弁当は相変わらずコロッケが多いな。さすが、武闘派女子」
「余計なこと言わないでよ!」
そういって修也が笑う。クラスのみんなが私と修也に注目する。もう、すっごく恥ずかしいんですけど。
「それじゃ、ありがとな。また今度も頼むぜ」
修也が教室から出ていく。いっつも忘れ物しないでよ。
「ねえ、理菜と修也君って仲がいいよね。付き合ったりしないの?」
「まさか、あり得ないよ。小学生からの腐れ縁ってだけ」
修也が私のところによく忘れ物を借りに来るせいで、あらぬ誤解を受けることが多い。
私が好きなのは修也じゃなくて晴翔なのに。
コロッケを口の中に放り込む。いつ食べてもうまい。これはやめられん。
弁当を食べ終わった晴翔は小説を読んでいた。私の好きな昼休みのいつもの光景。
クラスの男子はお昼を食べ終わるとどこかに遊びに行くことが多い。中には早弁をして昼休みはずっと遊んでいる人もいる。だけど晴翔はいつも教室で小説を読んでいる。
晴翔の席は三つ隣の列の前から二番目。一番後ろの私とはだいぶ離れている。晴翔と接点のない私は、ただ眺めているばかりだ。
「そういえば、明日って席替えだね」
一華が思い出したように呟く。私のクラスは担任の先生の方針で席替えは三ヶ月に一度。この席は先生からはバレないし、適度に晴翔のことを眺められるから好きだ。
でも、本当は晴翔ともっと近くになりたい。晴翔と話せるようになりたい。
「私たちも、もっと近くになりたいよね」
「うん、そうだね」
一華の言葉に私は別なことを考えながら頷いていた。