「少しづつ、晃太の気持ちも落ち着いてきて。私は晃太のそばにいたいって、言ったの。晃太はそんな私に微笑んでくれた。悦子さんのこと、もちろん、すごく愛していたし、きっとそれはずっと変わらなかったけど、晃太は私に笑ってくれた。『君は幸せになれるよ』って言葉をくれた。」

『明衣。君がいなければ俺は、どうなっていたかわからない。明衣がいたから、悦子のことを思い出にしようと思えた。』

明衣の過去にそんな出来事があったことを初めて知り、そして俺は、覚悟しなければいけないことを知った。

明衣を愛してる。

けれど、その想いを貫くためには、俺はきっと、このままではいけない。わかってしまったのだ。



彼女は過去の話の締めくくりとして、もっとも衝撃的な話をした。

「そんな晃太も、もういない。人って、どうしてあっさりといなくなってしまうんだろう?どうして、悦子さんは、晃太は、死ななければいけなかったんだろう?晃太はね、殺されたの。犯人は今でも見つかってない。警備員の仕事をしていた晃太が、たまたま二人以上でやらなくてはいけない現金輸送の仕事を一人で行い、狙われたように、襲われた。……信じられる?こんなことが起こるなんて、私には、信じられなかった。でも、実際に晃太はもういない。」

明衣の肩が震え、俺は彼女を引き寄せたが、俺も自分の手が震えていることがわかった。
震えている彼女が、どうか気がつかないようにと願った。