「……陽輔?」 頭を抱え、脇のショーウィンドウに寄りかかる俺に周りは不審な目を向けていた。 そんななか、俺の隣に立ち止まる誰かの気配を感じ、俺はげんなりした。 ナンパだと思った。普段、女に声をかけられることは少なくなかった。だが、頭を抱えてる男に声をかけようなんて、なんて空気を読めない女だ。 ―めんどくさい。― だが、その気配から発せられた声に、俺は顔を上げた。 聞き覚えのある、声だった。