おしゃべりな家庭科室で。

 文化祭は、最高の日となった。

 栗谷くんのシェフの道を、家族に認められた。
 わたしと麗が、人前で歌って拍手喝さいを浴びた。
 それから、わたしと栗谷くんが恋人同士になった。

 ああ、そうそう。
 麗と戸成くんも、文化祭から付き合い始めたそうだ。


「昨日のシュクメルリは失敗したなあ」

 放課後の家庭科室で、栗谷くんがぼやいている。

 文化祭から一週間が経った。

 わたしと栗谷くんは、あれからこうして家庭科室でいっしょにいることが増えた。
 家に帰れば、欠かさずにメッセージのやりとりをしている。
 まあ、料理のことや好きなアーティスト、ハマってるゲームや漫画の話がメイン。
 色気のない話ばかりだけど。

 それでも、わたしはかなり幸せだ。
 これで休日デートができれば完璧なんだけどなあ。

「シュクメルリってなに?」     
「ジョージアって国の郷土料理。簡単に言えば、ニンニクとチーズの入ったホワイトシチュー」
「へー。おいしそう」
「でも、家族には不評でさあ。にんにくキツイって姉ちゃんにはいわれた」
「そっかあ」
「あーあ、文化祭の明石焼きは、あーんなに美味しくできたっていうのに……」
「そういえば、わたしも文化祭で歌った曲、ヒトカラで歌ったけどあんなにうまく歌えないんだよね」
「まじかよ。文化祭マジックか?」

 栗谷くんはそういうと、ニヤリと笑って続ける。

「いや、むしろ愛の力か。おれ、明石焼きを作ってる時、紗藤の顔しか浮かばなかったし」
「えっ……。わたしも歌ってる時に栗谷くんの顔しか……」
「おいおい。赤くなるなよ! 照れ臭いだろ!」
「そっちが先にいったんでしょ!」
【料理にも歌にも愛じゃな】

 どこからか、そんな声が聞こえた。
 こえ、食材の声っぽい。

「ねえ、栗谷くん、もしかして、何か作ろとしてる?」
「やっぱバレたか。そう、実は●●という地方の伝説の●●●って料理を作ろと思って」
「はあ?! まったく聞いたことない地方の意味不明な料理なんだけど!」
「変なものは家で作るなって、家族にいわれててさあ」
「学校では作っていいの? それをまさか彼女に味見させる気?!」

 わたしがそういうと、栗谷くんはわたしの肩に手を置いた。
 どきん、と心臓が飛び跳ねる。