おしゃべりな家庭科室で。

 校舎の中は、午前中よりも落ち着ていた。
 客寄せは減ったし、遅い昼食をとっている生徒たちもチラホラいる。
 栗谷くんは、迷わずある教室へ。

 二年二組の教室だ。

「ここって……」

 わたしはそういって、栗谷くんの後に続いて教室に入る。
 そこには、ずらりと並ぶアクセサリー。
 陶器の飾りのついたペンダント、ブレスレット、それから指輪。

 午前中にわたしと栗谷くんが付き合っている、と勘違いした二年生女子がいる店だ。
 栗谷くんは、きれいな陶器の飾りの並ぶ指輪を見て、それからわたしに聞く。

「どれがいい?」
「えっ? どれって……」
「選んでくれ」

 わたしは、薄いピンクの花の飾りのついた指輪を指さす。

「これだな」

 栗谷くんは、その指輪を抜き取る。
 それからわたしの向かいに膝まづいた。

「本当に、いいんだな?」
「いいよ」
「おれは、指輪をプレゼントするなら、大好きな子だって決めてるんだ」

 栗谷くんの言葉に、わたしは一瞬、なにをいわれたのかわからなかった。

 ダイスキナコ?
 大好きな子?
 わたしが?
 え、なにこれ夢なの?!
 わたしの都合の良い夢なのでは?!

「紗藤が嫌なら、迷惑になるからプレゼントしないよ」
「嫌じゃない! 嫌なわけないでしょ!」

 わたしは、栗谷くんを見ていう。

「わたしだって、栗谷くんのこと、大好きなんだから」

 栗谷くんは、わたしの言葉にうれしそうに笑った。

 それから、右手の薬指に指輪をはめてくれる。
 指輪はぴったりだった。

 途端に周囲から、拍手が起こる。
 やばっ、今の見られてたし聞かれてた……。

 そりゃそうか。
 恥ずかしいやら嬉しいやらで、わたしと栗谷くんは顔を見合わせる。
 お互いに顔が真っ赤だった。