おしゃべりな家庭科室で。

「右腕すっげぇ痛い」

 栗谷くんがそういって、その場にへたりこんだ。

 一年一組の屋台は、午後一時前には既に売り切れ。
 それでも、「あれ、美味しいってうわさの明石焼き……なーんだ売り切れかあ」と屋台に来て残念そうに帰っていく人が何人もいた。

「おつかれさま」

 わたしが栗谷くんにいうと、「紗藤と早乙女もな……」と笑った。

「ねーねー、わたしと戸成くん、校舎のほう回ってくるね」
「そっちはそっちで仲良くやるんだよー」

 麗と戸成くんはふたりそろって、校舎のほうへと消えた。

「なーにいってんだろうね」

 わたしがそういうと、栗谷くんは黙り込んだ。
 それから、どこからたこ焼きのパックを取り出す。
 中に入ってるのは、明石焼きだ。

「紗藤のぶん、取っておいた」
「えっ? いいの?」
「うん。食べてもらいたかったし」
「わあ、ありがとう」
「早乙女と戸成ぶんもあったけど、もう行っちゃったな」
「それじゃあ、わたしはお先に、いただきます」

 わたしはそういって明石焼きを食べる。

 ふわふわの生地は卵たっぷり。
 タコは冷凍なのにプリっとしていて、存在感がある。
 明石焼きの生地はやさしい味。
 だけど、それはダシの味を引き立てるためだというのはすぐにわかった。
 ダシもおいしい。
 明石焼きの生地もダシも、どちらもお互いをうまいこと引き立ている。
 これが合わさった時、口の中で最高のハーモニーを奏でるのだ。

「おいっしい!」

 わたしはそういって栗谷くんを見た。
 すると、栗谷くんはそっぽを向いてしまう。
 わたしは不安になって聞く。

「え、なに? どうしたの?」
「かわいい」
「はい?」
「おいしそうに食べてる顔、かわいいよな……」
「……えっ?」
「まあ、興味のないおれにいわれても、うれしくないかもしれないけど」
「そっ、そんなことないよ!」

 わたしがいうと、栗谷くんが目を丸くして顔を上げた。

 その顔は、真っ赤だった。
 今朝の麗の比じゃない。

「わたし、栗谷くんにかわいいっていってもらえて、うれしい」
「本当に?」
「うん。いつも意地悪なことしかいわないから、からかわれてるだけかもしれないけど」
「ちがう! いや、ごめん……。本当はずっと……入学式の時から、かわいいなって思ってて、」

 栗谷くんはエプロンの紐を直しながら続ける。

「それで、二学期で隣の席になれてすっげえうれしくて……。でも、なんかうまく話せなくてついついからかっちゃって……」
「そうだったんだ……」
「だからおれ」

 栗谷くんがそこまでいった時。