おしゃべりな家庭科室で。

 麗と戸成くんと合流して、わたしたちはグラウンドへ戻った。
 一組のたこ焼き屋に行くと、大騒ぎになっている。

「もう粉がないってどういうこと?!」
「だから、ボウルひっくり返したんだって」
「予備の粉とかないの?」
「ねぇよ。つーか、ソースぜんぜんないんだけど?」
「ソースそこにない?」
「え、ないけど」

 屋台担当の子たちが、パニックになっていた。
 なんだか嫌な予感。

「なんだよ、なにがあったんだ」

 栗谷くんが事情を聞きに入ると、ひとりの男子がいう。

「粉がないんだよ。さっきボウルごとひっくり返して」
「予備の粉は?」
「ないよ」
「ねー、やっぱソースねえよ!」

 男子の言葉に、栗谷くんが腕組をする。
 すると、別の男子がいう。

「もうさあ、売り切れってことでいいんじゃねーの?」
「あー、それがいいな」
「そうだな。そんで文化祭ゆっくり回ろうぜ」  
「うんうん。それがいいよ」

 屋台担当の子たちは、そういうと、半被もエプロンもぬいで、どこかへ行ってしまった。

 栗谷くんは、屋台の内側に回り込んで、食材を確認。
 ネギ、クーラーボックスに入った冷凍タコ(焼き焼き用)、まだ材料はたくさん残っている。

「もったいねえ……」

 栗谷くんがつぶやいた。

「でも、粉ないんでしょ?」

 わたしがいうと、栗谷くんは考え込む。

「そうだけど、薄力粉つかってる店、他にもあるからそっちから分けてもらえば……」
「さっきクレープ屋さんあったね」

 わたしがそういって、少し離れた場所のクレープ屋に視線を向けた時。

 きれいな女性がたこ焼き屋台の前に立っていた。
 この人……。

「あっ。拓人くん」

 女性はそういって笑顔で栗谷くんに手を振る。

 わたしは胸がずきりと痛んだ。
 この人、昨日、スーパーで栗谷くんといっしょにいた人だ……。