おしゃべりな家庭科室で。

「楓」
「うん?」
「栗谷くんの好きな人は、楓だよ!」
「いやいや、ないないないないない!」
「なーんでそんなに否定するかなあ」
「だって、わたし、地味だし」

 わたしがそういうと、麗が大声で笑った。
 それからこういう。

「楓はかわいいじゃん! もっと自信もちなよ!」
「だって地味っていわれたし……」
「はぁ? 誰が地味っていったの? そいつ、目腐ってるよ」
「そうかなあ」
「うん。わたしはかわいい女の子が好きだから。楓のことかわいいなあって思ったから、『シュガララ』もいっしょにやりたいんだよ」
「ありがとう」

 お世辞でもうれしい。

「わたし、麗のことは世界一、ううん、宇宙一の美少女だと思ってる!」

 わたしがそういうと、麗は驚いたように大きな瞳を見開いた。

「はぇ?!」

 かわいい驚きの声を発した麗は、その直後にボンと音がしそうなほどに顔が真っ赤になった。

「そんな反応されると、わたしまで照れちゃう」
「ってゆーか楓、そんなふうに思ってくれてたんだ」

 麗がつぶやくようにいった。

「うん。毎日……少なくとも一日三回以上は思ってたよ」
「えぇ。うれしい。幸せ過ぎる」

 麗はそういって、ふにゃりと笑った。
 とろけそうな笑顔に、わたしまで幸せな気持ちになる。

「なんかもう麗がいればいいや。栗谷くんとかどうでもいいや……」
「だーかーらー! 栗谷くんは楓が好きなんだってー」
「うぅん……。心当たりがなさすぎる」
「わたしはありまくりなの! 栗谷くん、楓を見てばっかりだから」
「いっしょにいる麗を見てるのかもよ」
「絶対にちがうね。視線感じるなーと思ったら、栗谷くんが楓を見てたことが何度も何度もなーんどもあったんだから!」
「そうだったんだ」
「それにね、好きでもない子と家庭科室でふたりきりで料理するとかさ、クッキー渡すとか、絶対ない!」

 麗はそういって、こぶしをぐっと握る。

「そうなのかなあ」
「うん。そうなの」

 そういった麗の瞳は、きれいでうそをついているとか、なぐさめでいっているようには見えない。

「ありがとう。なんだか元気出てきた」

 わたしが笑うと、麗はホッとしたように息を吐いた。

「今日は楽しもうね!」

 麗がニッコリと笑ったので、わたしは大きくうなずいた。