おしゃべりな家庭科室で。

 学校へ行くと、校門には紙の花や色とりどりの風船で飾り付けてあった。
 校門をくぐれば、グラウンドでは屋台の設置や、準備をする生徒たちがいる。
 なんだかいつもの学校じゃないみたいだ。

 ワクワクしてくる気持ちとは裏腹に、昨日のシーンが何度も何度も頭をよぎる。
 栗谷くんと見知らぬ女性。
 彼女かな。
 好きな人かな。
 どっちにしても、わたしは失恋決定だ。

 この浮ついた空気のように、わたしも純粋に文化祭を楽しみたかった。
 でも、もう無理。
 でっかため息をついた時。

「おっはよ。どしたの? 元気ないよ?」

 そういって明るく笑ったのは、麗だった。
 すると麗はわたしの顔を見て、笑みを消す。
 そして、心配そうな顔で聞いてくる。

「顔色よくないよ? 具合悪い?」

 体調は別にわるくはない。
 このまま、体調不良だとうそをついて、帰ってしまおうか。

 どうせ、こんなに元気のないわたしといても、麗に気をつかわせるだけだ。
 それなら帰ってしまったほうがいいんじゃないだろうか。
 そう思って口を開こうとした瞬間。

「おはよう」

 栗谷くんがそういって、わたしに挨拶してきた。
 いつも通りの笑顔。
 それと同時に、昨日のあのシーンがまた鮮明によみがえる。
 ぐにゃり、と視界が歪む。

「えっ? 楓、どうしたの?!」

 麗の声に、自分が泣いていることにようやく気付く。
 大粒の涙がポロポロとこぼれ、地面にシミをつくっている。
 わたしは乱暴に手の甲で涙を拭きながらいう。

「大丈夫だから」
「いやいや、どこが!」

 麗はそれだけいうと、わたしの腕をぐっと引っ張った。
 わたしは麗に引っ張られるがまま、グラウンドを後にした。

 麗に連れてこられたのは、保健室だった。
 養護教諭の先生も、生徒も誰もいない。
 麗は、「よし」と小さくつぶやいて、部屋にある椅子に座る。

「わたし、体調が悪いわけじゃないの」
「うん。それはなんか大体察したから」
「えっ?」
「だーって、栗谷くん見て泣き出したんだから、体調不良じゃないってわかるよ」

 麗は笑っていうと、真面目な顔になって続ける。

「なにがあったの?」

 わたしは麗の向かいの椅子に腰かけた。
 大事な友だちに、こんなに心配をかけている。
 それならもう、すべて話そう。
 わたしは、昨日見た光景を話した。