おしゃべりな家庭科室で。

 わたしは思わず、棚の後ろに隠れる。
 心臓はバクバクいってる。

 あの人……まさか彼女?
 それとも、例の好きな人?
 でも、お母さんかもしれないし、そういえばお姉さんもいるっていってたし……。
 そう思ってもう一度、栗谷くんのほうを覗く。

 栗谷くんと女性は、家族にしては微妙な距離感があった。
 だけど、ふたりともすごく楽しそう。
 ……恋人同士っぽい。

 女性は高校生か大学生くらい?
 ってゆーか、彼女いたんだ。
 そう思った瞬間に、なにもかもどうでも良くなってしまった。

 スーパーにいる間、栗谷くんには気づかれなかった。
 だから結局、あの女性が誰なのかはわからなかったのだ。

 もし、栗谷くんに気づかれたら、隣にいる人を紹介してもらえたのかもしれないのに。
 姉だったかもしれないし、ただの知り合いかもしれない。

 だけど、彼女っていわれたら?
 その場でショックを受けて、最悪泣きそう。
 そんなのは嫌だから、会わなくてよかった。

 だけど、あの女性は本当に栗谷くんの彼女だったのかな。
 もし彼女じゃなくても、栗谷くんの片思いの人かもしれない。
 あんなきれいな人に、わたしが勝てるわけがない。

 その時、地味じゃんといわれたことを思い出す。
 そうだ、もともとわたしは誰がライバルであろうと、勝てっこないんだ……。

 このまま、眠ってしまおうかと考えた。
 そして明日、仮病をつかって休もうかな。
 早くに寝たら、母にも、「そういえば昨夜は早く寝てたからね」と仮病だとバレにくいし。

 ふと、麗の顔が浮かぶ。
 それから、栗谷くんの顔も浮かんだ。

 やっぱり明日は休むわけにはいかない。
 麗がいる。

 なによりも、クラスメイトがいるとはいえ、栗谷くんと過ごせる学園祭は二度とないかもしれない。

 二年生と三年生のクラス替えで、クラスが離れる可能性だってある。
 そうなると、この学園祭は貴重なんだ。
 あと、中学初めての学園祭をずる休みすると、のちのち後悔しそう。