おしゃべりな家庭科室で。

 栗谷くんが、家庭科室で女子に囲まれている。
 わたしはその光景を見て、思わずこうつぶやいた。

「これが現実だよねー」

 今日は家庭科の調理実習。クッキーを作るそうだ。

 栗谷くんが女子に囲まれているのは、「エプロン姿かっこいい」という理由らしい。
「だろ?」とか笑ってる栗谷くんも、相変わらずだ。

 確かに茶色のエプロンが似合ってる。
 家庭科室では黒いエプロンで、それも良かったけど。
 あの黒いエプロン姿の栗谷くんを知っているのはわたしだけなんだから!
 ……なーんていえるわけがない。

 ちなみに調理実習は、栗谷くんと班が別。
 こちらはくじ運がなかった。
 むしろ、隣の席になってくじ運が悪かったと思っていたのが、遠い昔のように思える。
 麗と同じ班なのが救いかな。

「調理実習も、楓といっしょでわたしラッキーじゃん」

 白にフリルがたくさんついたエプロン姿で、麗がそういって笑う。
 なにこの天使。

「わたしも麗といっしょで嬉しいよ。でも、わたし料理ほとんどしないから戦力にならないよ」
「わたしも作らないけど、かわいいやつ作ろうよー」

 麗の言葉に、他の班のメンバーを見る。
 既に居眠りをしている男子、スマホのゲームに夢中なもう一人の男子。
 うん、これは好き勝手作っていいってことね。

「よし、じゃあ、かわいいクッキー作ろう」

 わたしと麗は、そういってクッキーを作りはじめた。