おしゃべりな家庭科室で。

 ここ一週間、栗屋くんは「用事がある」といっては先に帰ってしまう。
 家庭科室で彼の料理を食べていないのだ。
 ダイエット的にはいいけど。
 でも、なんだろう、なんともいえなこの気持ち……。

「ふーん。なるほどねえ」

 麗はそういうと、ニヤリと笑った。

「なにがなるほどねえ、なの?」
「食欲がない理由、それは!」

 麗がびしっと人差し指を立てる。
 それからハッキリとこういった。

「恋だよ!」
「えっ?! 鯉?」
「錦鯉とかのほうの鯉じゃないよ!」
「ああ、恋愛のほうの……」
「そう! ほら、恋をしてご飯も喉を通らないっていうじゃない?」

 麗はそういうと、周囲を見回し、声のトーンを落としてからこう聞いてくる。

「まさか栗屋くんとうまくいってないの?」
「そもそもわたしと栗屋くんは、付き合ってないって」
「だって、付き合ってるって栗屋くんがいってたじゃん」
「いってないいってない。栗屋くんの用事に付き合ってるだけなんだよ」
「えー。そうなの?!」

 そういった麗は、とても残念そうだった。
 恋バナを欲っしているのに申し訳ないけど、わたしと栗屋くんはそういう関係じゃない。
 せめて友だちの麗には、本当のこと(シェフのことはいえなくても)をいわないと。

 わたしは簡単に今までの経緯を説明した(食材の声を聞けることみふせた)
 麗はなにやら考えてから、サンドイッチを食べていう。

「でもさあ、食欲がないのは、やっぱり恋だよねえ」
「そうかなあ」
「わたしは栗屋くんが関係してると思うんだけどなあ」
「だからそれはないって」

 わたしが笑いながら否定すると、麗はまじめな顔でいう。

「栗屋くんのこと、あんなに目で追ってるのに?」
「えっ? だれが? わたしが?」
「そうだよ。他にだれがいるのよ」
「目で追ってないよ~」
「無自覚かあ」

 麗はそれ以上は突っ込んでこなかった。
 いつも恋愛の話になると、あれこれと聞き出そうとしてくるくせに……。

 それはからかえる状態ではないってこと?
 そんなにわたし、栗屋くんのこと見てる?
 いやあ、見てないよ。

「栗屋ー。先生が呼んでる」

 その声に、わたしは無意識のうちに栗屋くんを見ていた。
 そこでハッとする。

 見てるかも……。
 いやいや、今のは偶然だよね。