おしゃべりな家庭科室で。

 久々のカラオケ、おまけにフリータイム。
 しかもカラオケ店は、いつも行ってる狭くて壁が薄いところじゃない!
 広くて明るくて、部屋と部屋の壁が厚い。
 おまけにドリンクバーにソフトクリームもある。
 最高!
 
 でも、こんな高いカラオケ店、金欠のわたしは大丈夫かな?
 いざとなったら、お年玉貯金をおろすしかないな。
 そう思っていると、なんと麗が一枚の紙を取り出した。

「そっ、それは七十パーセントクーポン!」

 わたしがいうと、麗はにやりと笑って続ける。

「そ。しかも一部屋(最大四名様)まで有効」
「すごい。麗さま!」
「うむ。くるしゅうない」

 そんなふうにふざけていると、さっそく、歌い始めたのは戸成くん。
 うまいなあ。
 その次は、麗。
 さらにその次は、栗谷くん。

 栗谷くんの歌声は、確かにかっこよかった。
 いや、正直なところをいうと……。
 歌声めっちゃ好み!

 もともとの栗谷くんの声も、好みだなあとは思っていたんだけど。
 歌声はさらに最高だった。
 
 なんでこのメンバーでわたし、最後に歌うことになったんだろ……。
 歌を褒められたことは何度もある。
 麗にも褒められた。

 でも、みんなうまいから、そのあとで披露するのは恥ずかしい。
 しかも栗谷くんが見てるの、緊張する。
 なぜか緊張する……。

「楓はね、歌も超うまいんだよー」

 麗がニコニコしながらそういった。
 ハードルを上げないでええええ!
 でも、今日もビックリするほどにかわいいから許すよおおお。

 わたしが歌うと、みんな黙り込んでしまった。
 えっ、なにこの静けさ?
 思ったよりうまくねえじゃん、こいつ。
 そう思われてる?

 心配になりつつ歌っていると、戸成くんがいう。

「う、うめぇ。なにこれすごい」
「やばー! 楓さらにうまくなってるー!」

 麗がそういってうれしそうにいった。
 よかった。大丈夫そうだ。
 チラッと栗谷くんを見る。
 栗谷くんは、黙ってカラオケの画面を見つめていた。
 ……なんかちょっと、怖い。

 マイクを置くと、栗谷くんがいった。

「すげぇな! 紗藤、めっちゃ歌うまいじゃん」
「本当に?」
「うん。思わず聞き惚れた」
 
 そういって無邪気に笑う栗谷くん。
 その表情に、心臓が飛び跳ねる。
 こんなふうに栗谷くんに褒められるとは思わなかった。