おしゃべりな家庭科室で。

「じゃあ、マリネのほうから」

 わたしはそういうと、「いただきます」とマリネを一口。
 口に広がる魚の臭み。
 酢につけたというのに、まだ残るかってくらいサーモンは臭みがあった。

 そして、ソテーを一口。
 身がふっくらしていて美味しい。塩コショウも効いてる。
 ただ……。

「マリネは魚の臭みが残ってるね。ソテーは美味しい」

 わたしがいうと、栗屋くんも試食をしてからいう。

「うーん。確かにマリネは臭みが取れてないな」

 それから彼は、ソテーも口に入れてうなずく。

「ソテーはおいしい」
「だよね」
「うん、このサーモンはソテー向きだったか。新鮮って書いてあったからマリネ向きかと思ったんだけど……」
  
 栗屋くんは、そこまでいうとまたソテーを一口。

「なんかこう、何か足りない味なんだよな」
「美味しいんだけどね」

 わたしいはそういって、うなずく。
 確かにソテーは美味しい。
 でも、「何か足りない味」というのもわかる。
 ただ何が足りないのかまでは見当もつかない。

「それにしても、食材の声が聞こえるってのは嘘じゃなさそうだな」
「嘘じゃないって」
「これからは、紗藤の助言を聞いてから料理をすることにする」

 栗屋くんはそういうと、右手を差し出してくる。
 握手か。
 ってことは、協力しろよってことね。
 まあ、わたしもそのつもりだったから……。
 そう思って握手をする。

 その瞬間、手のひらに変な感触がした。
 手のひらを見ると、なにやらシールがついている。
【半額】とデカデカと書かれてあった。
 わたしが栗屋くんの顔を見ると、楽しそうに笑っている。

「小学生か!」

 わたしは思わずそう突っ込んで、シールを栗屋くんの肩に貼った。
 ……まったく、油断できない!