おしゃべりな家庭科室で。

 家庭科室に行くと、何やら騒がしい声が聞こえてくる。
 それは食材の声だった。
 なぜなら、家庭科室には栗屋くんしかいないのに、女性の声や男性の声が聞こえてくるからだ。

 あーあ、ここ数日は平和だったなあ。
 だって栗屋くんに、家庭科室に呼び出されなかったから。
 金欠でヒトカラに行けなくても、家で音楽を聴いているだけでも癒された。

 動画で歌がうまくなる方法をしったり、手軽にできるエクササイズとか見て運動もできた。
 やっぱり放課後は家にひとりが限る。

 もう二度と栗谷くんに家庭科室に呼び出されませんように。
 寝る前、夜空に向かって何度も祈ったっけ。
 
 だけど今日になって、「放課後、絶対に家庭科室に来い」といわれた。
「行かなかったら?」と恐る恐る聞いてみると。
 栗屋くんはなんでもないことのようにこう答える。

「食材が無駄になる」 

 じゃあ、あんたが全部食べなよ。
 そう思ったけれど、栗屋くんが「おいしくねぇな」といって料理を残すところを想像する。

 そうしたら他の食材から、「料理殺し」として恨まれるんじゃないだろうか。
 しかも、わたしが来ないせいでそうなった、となれば……。

 もしかしたら、食材たちに変な呪いをかけられるかもしれない。
 そもそもこの状況が呪いみたいなものだっていうのに。
 わたしはそこまで考えてこう返事をするしかなかった。

「わかったよ……」