消えそうな君に夜を捧ぐ

俺は、明日死ぬ。

そんなことは1ヶ月前から分かっていて、覚悟もしていたけど、やはり目の前に来ると怖い。

佐那には検査があると言ったが、あれは嘘である。

そもそもこんな夜遅くに検査があるわけがないが、どうしても死んでしまう前にやりたいことがあった。

23時。

秒針が12のところを指した瞬間、俺の体は俺の意思を持って動いた。

すっかり筋力が衰えた腕でなんとか棚のスマホを取り出し開いた。

家族が念の為充電してくれていて本当に助かった。

メモアプリを起動して、思いを綴る。

父親、母親、水季、そして、佐那に。

どうやって意識不明の人間がこれを書いたのかとか、なんで佐那宛のものがあるのかとか、誰かがこれを見つけた時にきっと不思議がられるだろう。