消えそうな君に夜を捧ぐ

「…だよね?…佐那?聞いてる?」

突然呼ばれた自分の名前に目線を上げると水季が少し拗ねたような顔でこちらを見ていた。

「あ、ごめん、ちょっと考え事してて」

「もう、大丈夫?なんかこの流れ多いね、でも特に最近はずっとそんな感じじゃん。さっきも先生に当てられたのに気づかないし」

「ごめんごめん」

「…例の男の子のこと?」

麻央はいつだって鋭い。


私が逃げた日。

あの日から唯織に会えていない。

その翌日、急に逃げてしまった気まずさと未だ抜けないキスの衝撃を抱えながら勇気を出して歩道橋に行ったのだ。

でも、唯織は来なかった。

その次の日も、さらに次の日も。

嫌われた?

もう唯織は私と会いたくなくなった?