消えそうな君に夜を捧ぐ

「あ、あの」

「今日はこのくらいにしとこっか、もう遅いし」

「…うん」

いつものように唯織が先に歩いて行くんだけど、初めて、唯織は振り返らなかった。



自分の行動にうろたえてたまたま目に入った時計の針が12時近くを指していたのが幸運だった。

これ以上、まともな判断力を持って佐那を見ていられない。

不自然だけど何とか佐那と別れて背を向けた。

俺は、佐那を幸せにはできない。

佐那が俺に向けかけている気持ちを俺は返すことができない。

してはいけない。

だからこの想いはずっと胸の内にとどめておかなければならないのに。

まだ佐那の視線を背中に感じるうちは振り返りたい衝動を抑えてできるだけ平然と足を進める。