恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで

「執筆……ですか?」


マグカップに形の良い唇をつけて
静かにコーヒーを飲む姿が、それだけで
彼は絵になってしまう


『‥聞いてなかった?
 俺‥‥本を書く仕事してるから。』


嘘………ッ!先輩が!?


私の記憶が正しくて彼が本人なら
まだ22歳のはず。
‥‥その若さで作家なの?


『色々案内するから着いてきて。』


驚いている私を他所に丁寧にマグカップをテーブルに置いた彼が立ち上がると、
仕方なく着いていくしかなかった


まず今いるフロアはリビングダイニング、キッチン、パントリー、トイレ、
お風呂、洗面室などのランドリー
スペースがあった。


わたしはこの広い家の掃除や食事管理をするらしいが、今まで住んでた家なら1kで掃除も簡単だったのに広過ぎる。


ガチャ


『で‥ここが仕事部屋』


「えっ?‥‥うわッ!‥‥‥すごい!」


リビングに面したドアを開けた先に見えた光景に、お兄ちゃんが言っていたことがようやく理解できた


軽く20畳以上はありそうなかなり広い部屋には大きめの木目のデスクとチェア
があり、パソコンが置かれている。
あとは驚くほどの壁一面の本棚は
一言で言えばまるで小さな図書館
のようだ。



「…私‥本がとても大好きなんです。」


本を読むのが大好きだから、気付けば緊張感なく顔が緩んでしまう


『‥‥‥‥知ってる。』

えっ?


消えそうな小さな声で何か言った気がするけど気のせい?



『‥ここの本なら好きなだけ読んで
 いい。ただし仕事中は急用以外は
 入らないこと。次は2階に行く。』


「あっ‥‥は、はい。」