恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで

一歩こちらに近付く彼から逃げ出したいのに、緊張からか震えて足が動かない


『櫂さんから根性あるやつって
 聞いてたけど‥間違いだった?』


えっ?


目の前で腕組みして見下ろす彼に
体がさっきよりも強張るけど、昔とは
かなり違う口調や表情に違和感を感じる‥‥


もしかして……もしかしなくても、
‥‥私のことを覚えてない…?


短い数ヶ月の出来事は、私にとっては
大きな問題でも、相手にとってはもしかしたら大したことではなかった?



「や、辞めたいなんて言って
 すみません。人として最低な発言で
 した。お時間取ってくださったのに
 申し訳ありません。‥‥‥実はもう
 他のバイトを辞めてしまったんです。
 なので‥ここで働かせてくださいッ!
 お願いします。」



初対面で挨拶もせず辞めたいなんて
言ったら、普通は受からずその場で
激怒されて帰されるだろう


はぁ‥‥
お兄ちゃんにも謝らないと‥。
それよりも明日からの生活費を
どうしよう‥‥‥。
もう一度日払いのバイト先に頭を
下げて雇ってもらうべきかも。


『‥‥そこに座って。』


えっ?


相変わらず無愛想な態度の彼は、顎で軽くソファーの方を合図したかと思えば、
私を置いて何処かへ行ってしまう


私‥‥帰らなくてもいいの?


状況が分からず力拍子抜けしてしまう。

普通なら帰れって言われてもおかしく
ないくらいの態度をとったのに何故‥


『立花さんコーヒー飲める?』


「えっ!?‥‥あ…はい‥甘めなら‥。
 じゃなくて‥ッ!お、お構いなく。」