恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで

瀬木 遥 side


見送ってくれた日和が寂しそうな顔をした瞬間、このまま抱き締めて連れて帰りたいなんて思ってしまった


もう一度この腕に抱き締めて何度も
キスしたい‥‥。

不謹慎にも日和のあの顔を見ると
抑えが効かなくなるほど、頭の中も心の中も日和のことでいっぱいだ‥



『あれ?櫂さん、どうしたんですか?
 面会時間はもう終わって‥』

『見ろ』


えっ?

エレベーターの出口にいた櫂さんが
俺に向かって差し出したスマホの画面に驚き吐き気が押し寄せる


まさか………。
受け取ってそれを確かめれば
そこにはスゴい数のメールが届いていた


『櫂さん……これ‥って‥』


その内容を見れば見るほど気持ち悪くなった俺は、口元を手で覆ってその場に座り込む


『おい!大丈夫かよ!?』

『はい、すみませ……ッ…それよりも』

『ああ、早くしないと危ないな。
 暗証番号をとくのに時間がかかって
 やっと開けたら中身は想像以上に
 すごいことになってた。』


その時、櫂さんのスマホが鳴り響いて
電話に出てしまったので、もう一度画面を確認した


自分が思ってる以上の事が日和の側で起こっていた事に冷や汗が背中を流れる。


『分かりました!ええ下にいますから。
 ………おい、隼人!日和が倒れた!』


えっ!?


腕を掴まれ立ち上がらされると、
櫂さんに思いっきり頬を叩かれる


『しっかりしろ!
 おまえが守りたいのは誰だよ?
 日和のことは大丈夫だから行け。
 さっき車のとこにあの子が居たのを
 見たからな。』

『はい…櫂さん…日和をお願いします』



2度も櫂さんに目を覚ましてもらった俺は息を整えると病院を飛び出した


正直倒れたなんて聞かされたら真っ先に
日和の側に駆けつけたい‥‥


あの本がやっと完成したのに、
一番に読んでほしい彼女には
負担になりとても読ませられなかった

そう思ったのに、あの本を読みたいと
言ってくれた小さな彼女に涙が出た。


今度は俺が守るから‥‥‥



『‥あんた‥ここでなにしてんの?』


俺の車の影に見えた人物が俺を
待っていたかのように嬉しそうに
笑顔を見せて近付いてくる


『瀬木さん!やっと会えたね?
 こんなとこで待ち伏せして
 すみません。でもッ会いたくて』


顔を赤くして俯く相手に息を落ち着かせ近付くと両肩を強く掴んでやった


『痛っ!瀬木さ………?』

『なぁ、あんたさ‥バレてないと
 思ってるかもしれないけど、
 そういうとこ昔と変わらないな?』


冷めた笑顔を向ければ彼女が震えた


『な‥なんの‥こと……』

『中学の時にちゃんと返事をしてる
 筈なんだけど?』


相手の肩から乱暴に手を離し、櫂さんから預かったスマホを操作して画面を見せれば彼女の血の気がひいたのが分かった


俺が15歳の時に告白してきた相手がこの子だった。当時彼女は13歳で今より幼かったから、うちに来た時は気づけなかった。でも‥家に戻ってきた時に見せた顔でなんとなくそうかなって思ってた


告白を断ってからも相当しつこくて、
ポストに何度も入れられる手紙や、
夜遅く家まで来たときにはさすがに
警察に通報したことがあった


日和と彼女が大学で知り合ったのは
ほんとに偶然だったと思う。


俺が名前を変えて作家になってた事と
偶然彼女が俺のファンであった事が
今回の偶然を招いたのかもしれない


『あ………あの私はただ好きなの。
 ずっと好きで好きで』

『は?なに?俺のことが好きだから
 こういう悪質なことして誰かを
 傷つけるのが正論?』


櫂さんから預かっていた日和のスマホには、"別れろ、瀬木さんに近付くな"
"しぶといんだよ、ブス"などが頻繁に
あの後も送られていて、極め付けはさっき送られたばかりのこのメールだ。


〝言うこと聞かないと今から殺しに
 行くよ?今度は確実にね?〟


これを見て立花を殺しに来るかも知れないと櫂さんがさっき知らせてくれたら
案の定彼女が既にここに居た訳だ。


『日和を階段から突き落とした?』

『あ………瀬木さ‥そんなこと‥‥』

『日和がどんな思いをしてるのか
 知ってる?今から‥‥あんたにも俺が
 同じことしてやろうか!!?』


女だろうと関係ない‥‥。
昔からストーカー行為をされ続けた時に
一度は許そうとしたけれど、今回のことはとても許せることじゃない


相手の胸ぐらを力強く掴んで
引き上げれば苦しそうに顔を歪ませる


『あんたが俺の何が好きなのかなんて
 知らないし、興味もない。でもな?
 あんたのやったことは立派な犯罪だ!
 罪はちゃんと償え。そして俺と日和の
 目の前に2度と現れるな!』



思いきり体を震わせた彼女を離すと同時に警察のサイレンが聞こえてきた。
櫂さんが念の為に呼んでくれてたのなら
好都合だからあとは任せよう‥‥。


良かった……もうこれで日和が
怯えることもないし傷付けるものはない

あとは警察がちゃんとしてくれるから
大丈‥‥‥


ドンッ!!


えっ?


何が起こったのか分からずにゆっくりと下を向けば腹部に感じる違和感に相手を突き飛ばす


『ツッ!!……なにし‥て…』

『あ‥‥だ、だって‥‥待っても
 待っても手に入らない‥‥。
 どうして?だって‥‥ただ私は
 好きなだけなのに!!』


『おい!!!君たち!何を………
 おい!!そっちを押さえろ。
 ……君!!大丈夫か!?』


『……に会いに……行かなきゃ』

『しっかりしろ!!
 誰か病院の人を呼んでこい!!』


日和に会いに行かないと………。
もう大丈夫だよって早く抱き締めてあげたいから………


瀬木 side 終