「もしもし!!お兄ちゃん!?」
"おぅ、どうだ?"
「‥どうだじゃないよ!!
相談なくやり過ぎ!!
追い出すなんて度が過ぎてる!」
耳元でケラケラと笑う兄に、ここが外と言うことも忘れて怒鳴り続ける
"日和、尾田に会えたか?"
ドクン
彼の名前を聞くだけで私の心が勝手に反応してしまう。これから考えたくなくても一緒に住めば毎日顔を会わせることになるのが今でも信じられない‥‥
「……不安だよ。」
"アイツは若くして才能を発揮したヤツだから勉強になるし、やるだけやって来い。そして俺の授業はもう寝るなよ?"
しつこいな。分かってるし……
電話を切った後、今日で何回目になるか分からない溜め息がこぼれる
米すら見当たらなかったので近くのスーパーで調味料からお米まで買ったから、
流石に一人で運ぶには大変だった。
ガチャ
「はぁ‥‥て、手が‥ちぎれそう」
近くにスーパーがなかったらと考えると
恐ろしいけれど、大学から割とここは近いからこの辺の地理に詳しくて良かった
『おかえり』
ドクン
リビングのドアが開くと、眼鏡をかけたままの瀬木さんがこちらに歩いて来た
おかえりって誰かに言われるのは久しぶりだから口元が綻ぶ
『どうした?』
いけない……つい嬉しくて
「あ‥あの遅くなってすみません。」
『‥これ全部一人で運んできたのか?』
私の手から軽々とそれを奪うと、置いてあったもうひとつの袋も奪われる
「あ、あの!私がやりますから」
体力ぐらいしか取り柄がないのに、
雇い主に家事をさせてたら意味がない
瀬木さんを追いかけると、キッチンに荷物をおろしてから少しムッとした表情を見せると私の方へ片手を差し出してきた
あ……えっと‥なんだろう‥
残りのお金‥渡せばいいのかな?



