恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで

先輩って普段何食べてるの?ゴミも溜まってないし、本当に飲み物だけで生きてるわけではないよね?


とりあえず何か買いに行こうかな。
私もお腹空いたし、瀬木さんも食べる物がないし‥‥。


無防備にもソファに置きっぱなしにしていた鞄から財布を取り出して気がついた


「‥‥‥‥。」

 
どうしよう‥‥。
悲しいくらいお金が入ってない‥。
情けないけど今は借りるしかないか‥‥


あぁ…。お兄ちゃんの事だから冷蔵庫の中身も処分しちゃったんだろうな‥。
作り置きとか沢山冷凍しておいたのに
勿体無い‥‥。


コンコン


静かにドアの前まで行き、遠慮がちに
ノックした。


「あ…あの‥‥先‥
 せ、瀬木さん、少しいいですか?」


危なっ‥‥
先輩って言ってしまいそうになり
思わず口元を押さえてしまう。


ガチャ


『なに?』


あ………眼鏡かけるんだ‥‥。
初めて見る先輩の姿に一瞬戸惑うけど、
やっぱりどんな姿でも先輩なのだ。


「あの…食材が何もないので
 買いに行きたいんですけど、その‥
 給料日前で恥ずかしいんですが
 お金がなくて……。」


こんなことを先輩に言うのが恥ずかしくて最悪だけど仕方ない。
本当に給料日前だったし手持ちが殆ど
ないのだから。


眼鏡をしても素敵な瀬木さんは、
財布から何枚かお金を取り出すと
無言で私に差し出してきた


「あ‥‥えっと‥こんなには」


『今月分。渡しておくから足り
 なかったら言って。』


両手に収められた諭吉は1枚2枚じゃ
ない。


ここでどんな暮らしをしてきたんだろう?私ならこれで数ヶ月分の食費に回せるよ?



『あ、あと‥これ渡しとく。
 鍵についてるカードキーを入り口に
 かざせばロックが開くから。』


「ありがとうございます‥。」


笑ってはいけないと思いながらも
それが無口な彼に似合わず笑みが
こぼれてしまう。


諭吉を財布に有り難く納めた私は、
鍵についたリボン付きのベルを
チリンと鳴らして鍵をかけた。