恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで

夕方、車イスで病室から出た私は、
看護師さんに院内の中庭に初めて
連れてきてもらうと、久しぶりに感じる
外の空気に気持ちが軽くなる


『暑くない?』

「平気です。あの、夕食まで
 ここにいてもいいですか?」


木陰のあるベンチの横で、そよ風の心地よさを感じていたいと思えた。


『一人で大丈夫?』

「はい、一時間だけですよね?
 ここで本を読もうかなって。」


『ふふ、それは楽しみね。それじゃあ
 夕食の18時前に迎えに来るから
 何かあったら必ずブザーを鳴らして
 くださいね。』


もっと早くここにくれば良かった‥‥。
9月にさしかかる夕暮れのこの時間は
とても過ごしやすい


左手だけで本を読むのにも最初は大変だったけど、この生活にも慣れてきた。



『一緒に本を読んでもいいですか?』


えっ?



しおりを引き抜こうとしたのに、
隣のベンチに座った人の声に驚いて
膝から本ごと落ちてしまった


「(ああ……やっちゃった)」


病室でも何回か床に落としたことがあるけど、下に落ちたらおしまいで取るのに物凄い痛みを伴う為誰かが来るまで
読めずにいたほどだ。


容姿がかなり整ったその男性が、すぐに本を拾ってくれると、優しそうな瞳が少しだけ細められて笑ってくれた。


『本が好きなの?』

「あ、はい‥とても大好きです。」

『そう。………俺もだよ。』

えっ?