恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで

今更だけど、両親が離婚して名字が変わってて良かったのかもしれない


瀬木さんは引き出しからなにかを取り出すと私にそれを渡した。


『それ……とりあえず見ておいて?
 俺、少し明日までの仕事があるから
 少しこもるから悪いな。家の中は
 自由に見て回っていいから。』



リビングに一人で戻った私はそのA4サイズの紙を固まったまま暫く見ていた


えっ!!?


何に驚くってその契約書には
お兄ちゃんの住み込みの承諾サインが
既にされていたのだ。


面接する必要ないじゃん!!
 

アルバイトだから一応こういう最初の面接のやりとりは必要かもしれないけど、
最初から相談もなしに住み込みなんて
どうかしてるよ‥‥。


確かに文芸専攻に変えて、卒業した後は出版社や編集プロダクションとかに
入るのは夢だし、間近で作家さんの仕事が見れるのはラッキーなことだと思う


ただ……その最初のきっかけとなる相手が先輩だとは思わなかった‥。


あの頃は図書館の貸出カードに
尾田 隼人って書かれた名前がある本を借りれた時が1番嬉しかったな‥。


先輩‥‥大人っぽくなってた‥‥。
私もあの頃よりは大人に見えますか?


6年前。先輩は覚えてないのかもしれないけど、転校することが決まった日に
私が先輩を酷く傷付けたことが今でも後悔としてずっとずっとここに残ってる



「‥‥はぁ」


悩んでても仕方ない‥‥
働かないと生きていけないのだから。
やるしかないんだから。



もう一度一通りゆっくり室内を散策し、
部屋で荷物の整理をし終えると夕方5時を過ぎた頃だった。


今日からここで住まないといけないし、
家政婦がバイトならとりあえず
晩御飯とか作らないといけないよね?


立ち上がった私は一階に降りキッチンに向かうと、そこは使った形跡もないくらい綺麗だった


ん?使った形跡がない!?
もしかして……


ガチャ


やっぱり思った通り‥‥!
飲み物しか入っていない‥‥。