コーヒーが半分に減った頃、やっとお互いの近況報告は終わった。

私が漫画喫茶でアルバイトしながらフリーター生活をしていることを伝えると真木は「お前は自由気ままに過ごしてるのが一番いいよ~オフィスレディ?アフターファイブ?夏色コスメ?笑っちゃうよ~」とすごくバカにされた。

私が口を尖らすと、真木はニコニコしながら「ごめんよ~」と悪気があるのかないのかよく分からないごめんをくれた。

「じゃ~松本は今は結構フリーダムなんだね?」

「まぁ、フリーターですからね」

「よし!じゃあ本題!」

真木はいきなり私の後ろに向かって指を指す。一瞬何が起こったのか分からなく固まってしまったが、その指が向かう先へ視線を動かす。


私の目線が泳ぐ、しかしそれをハッキリ目にしたとき私は硬直する。


ヤニ汚れの壁には古ぼけた沢山の宣伝ポスターやポストカード、その中に埋もれながらも顔を出しているそれを私は見つけてしまった。それと同じようなやつが家を出るとき見送ってくれた。


『あなたに花束を』


真木の指は確かにそれを刺していた。



「一緒に再演しないか?」



半年戦争、始まりの合図であった。